坊主頭の俺は その14

米軍の第8軍は横浜にカマボコ兵舎を並べ駐屯してた。

元住吉の進駐軍印刷所 父の店はアメリカの化粧品の
 それは見事なパッケージと甘い香りに包まれていて
外界の敗戦国の街の様子は 惨めで不潔で哀れな国の
 現実の姿だった。

父の仕事場に飽きると 外で遊んでいると連絡将校が
 ジープで俺を誘い綱島街道を砂塵を巻き上げて
横浜の基地まで助手席に座れと言われ ゴーグルと
 ぶかぶかのヘルメットを被り父に一声かけて 目が
回るスピードで走る。
 基地のアイドルとは言わないが格好のマスコットで
MPが冗談だろうがゲートでチビの俺に向かって
 手先を曲げた海兵隊式の敬礼をされ俺も恥ずかし気に
小さく敬礼を返した。

南風に追われて 初夏を思わせる白い雲 行きつく先は何処へ
 ヒバリが鳴いて燕が萱原を掠め飛ぶ カミさんは明日は満開の
桜 この近くのニケ領用水の多摩川の取り入れ口の絶好の場所で。

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