もう一つの小遣い稼ぎ その37

日本は米国に戦争で負け平和がもどり 
 混沌としていたが 薄皮を剥ぐように
贅沢はできないが 明日になれば もう少し
 ましになる。 この確信は誰もが疑うことはない。

取りあえず贅沢を言わなけりゃ 食って着て 雨風は
 凌げる。頭の上に圧し掛かっていた爆弾や機銃掃射は
話しのタネとしてのこって 重苦しい雲がやっと去って
 輝くお天道様が これからは 頑張れと 
この生真面目な国民は 大空を見上げ拳を握って
 声に出さずに 片手を突き上げた。

戦争の火は対岸の半島に飛び火して 後ろの二つの大国が
 威信とイデオロギーという大変 厄介な奴が後押しして
連日の新聞の報道は 最前線が上がったり下がったりして
 日本は戦争という究極の破壊の兵器の部品作りを強いられた
いいや 絶好の戦後復興のチャンスと町工場の明かりが 夜7時
 になり 9時になり 深夜まで旋盤の音とスピンドル油の
油の匂いが町を満たした。
 ウチノ貧乏も 金の卵たちが日曜日には客待ちのスペースを
満たすようになって 幾らか うるおい始めた。

文房具屋の角に周一くらいの割で「子供たちの憧れ」紙芝居屋が
 自転車の特大の荷台に手作り感のある 紙芝居を立て
よっこいショ!と年配の親父がスタンドを蹴り万端整える。

そこで俺の出番で紙芝居屋の親父から受け取った体の半分は
ある太鼓を腹に抱えてバチを握って 
      ドンドン ドンガラ カッタと叩きながら
ぐるっと地域を回って子供たちに紙芝居が来たと知らせる。
 報酬が直径が10センチほどの最中の皮みたいな薄せんべいに
水あめを塗って有難うもなしに寄越す そしてボソッと一言いう
 金出して水飴買った客のうしろ見ていいと顎をしゃくる。

カミさんが階下を見ながら 上のIさん夫婦が旅行用の
 バックを引いて出かけたよ。 この夫婦は静かな礼儀正しい
人で 洗濯石鹸の小さなのをもって挨拶の来られた時にゃ
 カミさんは留守だし戸惑った。 国がどことか仕事はなんて
話す間もなく夫婦で 変則的な時間に帰ってきたり足音を
 させずに仕事にゆく。


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