腕時計 その58

腕時計が欲しいなと途轍もない野望を持った。
 
近くの読売新聞へ おずおずと新聞配達を
 やりたいと新聞屋店主に言ったら 今やめる奴
がいて丁度いいと だが朝が起きられるかって
 取りあえず朝刊からと半分眠りながら 広告を
新聞に挟みこむ 新聞屋は文典堂の隣で 店主は
 在日の人だったが優しかった。

トラックが3時過ぎだろうか 店先に新聞の包を
 落とす音で目覚めて それからが店を出るまで
結構な作業だ。
 
200部以上の新聞は小さな肩に背負い紐が
 食い込んで変電所の坂を登ると息が上がる。

新聞を配り始めるのが赤線の中と来てる。

泊まりの客が駅に向かう時間で なんか間が悪い
 暁の別れ時 客を送り出したおねーさんに新聞を
差出すと 坊やも早く大きくなって来てねだって
 駆け出して踏切を渡りぺんぺん草がコンクリートの
割れ目から生えてる2国を横断したところから
 多摩川大橋の土手までが配達が始まる。

給料を貰って自力で買った腕時計をクラスの奴らに
 自慢した。

風が強い日が続く ここは生田緑地から南風が
 通り抜ける。 田圃の2回目の耕運機の掻き起こし
で 土が乾燥して 密閉度はいいはずだが いつの間にか
 テレビやサイドボードの上は埃だらけだ。
蛙も叫んでいる はやく田んぼに水を入れろ。

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